都会の病院と地方の病院

病院とは厳密には「20人以上の患者を入院させられる施設」とされていますが、看護師の職場として「病院」は半数以上の約6割を占めています。都会と地方の病院を比べた場合、まず目につくのが大規模な病院の数の差です。主な都府県別に300床以上の大規模病院の数を見てみましょう。

【300床以上の大規模病院数】 (括弧内は病院総数)

<大規模病院が多い都府県>
東京都 135 (641)
大阪府 122 (535)
神奈川県 87 (345)
福岡県 75 (466)
愛知県 70 (325)
兵庫県 68 (349)

<大規模病院が少ない県>
山梨県 6 (60)
福井県 7 (72)
鳥取県 9 (45)
島根県 15 (54)
秋田県 17 (74)
山形県 18 (68)

(出典:平成24年医療施設調査 政府統計に基づく)

地域によって大規模な病院の数にかなりの差があることが分かります。都会に多い大病院には最先端の医療機器を備えたICU(集中治療室)、やCCU(冠疾患集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)といった先進医療の施設があります。また、中にはそういった高度な医療を専門に行う病院も存在し、新しい治療法や高度な医療を学びたい看護師にとっては非常に魅力的で勉強になる環境です。そういった高度な医療を行う現場では看護のスペシャリストとして専門の分野に特化した認定看護師も活躍していて、看護師としてさらなるキャリアアップを目指す人にもうってつけの環境と言えるでしょう。

ただ一方で、規模の大きい都会の病院では医師や看護師の数が多いためにお互いが顔の見えない関係になりがちなのも事実です。逆に地方の病院では規模が小さい代わりにスタッフの関係が密になってきます。現役の看護師さんの話によると、だいたい200床くらいの病院からお互いの顔が見えるようになってくるといいます。
そういった意味で、地方の病院で勤務する利点は病院全体にアットホームな環境があるところだと言えます。都会の大病院のような大きな組織ではないので働く上でも都会よりも自由が利きます。病院内で定期的に開かれる勉強会でも意見を言いやすく、看護師が新しい事を実践したり組織を動かしていくことも可能です。

また、地方の病院には都会のような最新医療機器が少ないのは事実ですが、逆にそれが看護師にとって仕事をしやすいことにもなります。例えば最先端の医療機器に何かトラブルが起こった場合、その装置に精通した専門家がいなければ対処することができません。もしそれが夜間だった場合は急いで専門医や機械メーカーに連絡を取らなくてはなりません。ところが、そういった複雑な医療機器がなければ、万一の機械トラブルにも看護師が自分で対応することもできます。もちろん、新しい医療機器を勉強したいと思っている若手看護師にとっては不満になってしまうでしょうが、難しいものがない分それ以外の事にも気を回すことができて多少は気楽に働けるということもあります。